エンジニアの年収は、スキルの高さと比例しません。技術的に優れた人が、より低い年収で働いていることは珍しくありません。
これは評価が不当だからというより、年収を決めている変数が別のところにあるからです。何が年収を決めているのかを先に理解しないと、努力の方向がずれます。
年収を決めている3つの変数
- 01
事業の収益性
会社が一人あたりいくら稼いでいるか
影響が最も大きく、個人の努力では動かせない。ここが理由なら社内で頑張っても上限に当たる
- 02
担う役割
実装する / 設計する / 決める / 動かす
技術力ではなく責任範囲の話。実装が速くても上がらないのはここが下のまま
- 03
代替のしにくさ
技術 × ドメイン × 事業理解
単一のスキルは供給が増えると相対価値が下がる。組み合わせは下がりにくい
1. 事業の収益性
もっとも影響が大きい変数です。会社が一人あたりどれだけ利益を生んでいるかで、給与の上限が決まります。
同じ技術力の人が、受託開発の会社と、収益性の高い自社サービスの会社で、同じ年収になることはありません。これは個人の努力で動かせない部分です。
自分の年収が上がらない理由が、評価制度ではなく事業構造にある場合、社内で頑張っても上限に当たります。判断材料としては、会社の売上と従業員数、そして直近数年の推移を見ることです。
2. 担う役割
同じ会社の中でも、役割によってレンジが違います。
- 指示された範囲を実装する
- 設計を決める
- 何を作るかを決める
- 人と組織を動かす
上に行くほどレンジが上がります。技術力の話ではなく、責任範囲の話です。「実装は誰よりも速いが、年収が上がらない」という状態は、この軸で下のままだから起きます。
3. 代替のしにくさ
その人がいなくなったときに、どれくらい困るか。これが希少性です。
希少性は、珍しい技術を使うことでは作れません。むしろ、次の組み合わせで生まれます。
- 技術 × 業務ドメイン(金融、医療、物流などの知識)
- 技術 × 事業理解(なぜそれを作るのかを判断できる)
- 技術 × 組織(人を採用し、育てられる)
単一のスキルは、いずれ供給が増えて相対価値が下がります。組み合わせは下がりにくい、というのが実感に近い整理です。
今の会社で上げるか、動いて上げるか
3つの変数のうち、どれを変えられるかで判断します。
| 状況 | 有効な手 |
|---|---|
| 事業は伸びているが、役割が下のまま | 社内で役割を変える交渉をする |
| 評価はされているが、給与テーブルの上限に当たっている | 転職で事業の収益性が高い側に移る |
| 事業が縮小している | 早めに動く。社内での努力は反映されにくい |
| 役割も収益性も問題ないが、相場より低い | 相場を確認したうえで、社内交渉か転職か決める |
「転職すれば上がる」でも「まず社内で頑張るべき」でもなく、どの変数が詰まっているかで手が変わります。
自分の市場価値は、推測せずに測る
自分の年収が相場より高いのか低いのかは、社内にいると分かりません。統計データを見ても、職種の粒度が粗く、自分に当てはまるかは判断できません。
もっとも確実なのは、実際のオファーやスカウトの内容を見ることです。転職するかどうかを決める前でも、これは可能です。
スカウト型 転職プラットフォーム
ビズリーチ
職務経歴を登録し、企業やヘッドハンターからのスカウトを受け取る形式。今すぐ転職しない人でも市場価値の観測に使える。
この記事で挙げる理由転職の可否を決める前に、実際にどのレンジで声がかかるかを観測するため
向いている人
- 転職するか決めていないが、現在の市場価値を知りたい
- マネジメント経験・リード経験がある
- 年収レンジの高い求人を中心に見たい
向いていない人
- 職務経歴を書く時間を取れない(登録しただけでは何も起きない)
- 実務経験が浅く、スカウトの母数が期待できない段階にある
- 在籍企業に転職活動を知られたくない(公開範囲の設定が必要)
注意点
- 職務経歴書の内容がそのまま結果に直結する。登録しただけでは動かない
- 一部機能は有料プランが前提(条件は変更されうるため公式で確認すること)
面談・登録の前に確認しておきたいこと
- 無料の範囲でできることと、有料が必要になる範囲はどこか
- 現在の在籍企業に情報が見えない設定になっているか
- 届いたスカウトが「一斉配信」か「経歴を読んだうえでのもの」か
※ リンク準備中
職務経歴を登録して、どういう会社から、どのポジションで、どのレンジの提示が来るか。これは推測より正確な情報です。声がかからない場合も、それ自体が「今の見せ方では伝わっていない」という情報になります。
具体的に開発職として動くことを検討する段階になれば、求人の中身まで確認できる相談先に切り替えます。
IT・Web系特化型 転職エージェント
レバテックキャリア
ITエンジニア・クリエイター職に特化した転職エージェント。技術領域の話が通じる担当者に当たりやすいのが特徴とされる。
この記事で挙げる理由開発職として、具体的にどのレンジの求人が対象になるかを確認するため
向いている人
- 開発職としてのキャリアを継続しながら年収を上げたい
- 使用技術やチーム体制を具体的に確認したうえで応募したい
- SESから自社開発・受託開発への移動を検討している
向いていない人
- 開発職から離れ、非IT職・事業側へ転向したい
- 実務経験がなく、まず経験を積む段階にある
- 地方在住で、勤務地を動かせない
注意点
- IT職に特化しているため、非IT職への転向相談には向かない
- 求人の中心は首都圏・関西圏。地方求人は事前に確認が必要
面談・登録の前に確認しておきたいこと
- 紹介予定の企業の開発体制(内製比率、レビュー、テストの運用)はどうなっているか
- 提示年収のうち、固定残業代はいくら含まれているか
- 自分の技術領域で、直近どのレンジの求人が動いているか
※ リンク準備中
短期で効くこと、長期で効くこと
最後に、時間軸で整理します。
短期(数ヶ月)で効くこと
- 相場を把握し、社内の給与テーブルと照らす
- 役割の変更を上長に打診する(マネジメント、設計、採用への関与など)
- 転職市場での評価を実際に測る
長期(1〜3年)で効くこと
- 業務ドメインの知識を、技術と組み合わせて積む
- 設計判断と、その結果を説明できる経験を増やす
- 人を巻き込んで進めた経験を作る
短期の手を打たずに長期の努力だけを続けると、気づいたときに数年ぶんの差が開いています。逆に短期の手だけでは、次の壁で止まります。両方を並行してください。
よくある質問
- 資格を取れば年収は上がりますか?
- 会社の制度として資格手当がある場合を除き、直接は上がりにくいのが実態です。ただし、応募条件を満たすために必要な場合はあります。目的を分けて考えてください。
- 転職以外で年収を上げる方法はありますか?
- 社内での役割変更、副業、フリーランス化などがあります。それぞれリスクと必要な準備が違うため、収入カテゴリの記事も参照してください。
- 年収だけで転職先を選ぶのは危険ですか?
- 提示額が高くても、昇給の仕組みがない、あるいは事業が縮小している場合があります。入社時の額と、3年後の想定を分けて確認してください。
